歳時記

小沢一郎の豹変は「君子」か「ヤクザ」か

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「君子は豹変す」――よく知られた諺だ。
 意味は、 君子(立派な人)は、過ちを犯してもすぐに改めることから転じて、「人が性行や態度などをガラリと変えること」を言う。
 ちなみに「豹変」は、豹の柄をもじったもので、豹の黄と黒の斑紋がハッキリと浮かび上がっているようにガラリと一変することをたとえたものだ。
 そこで、民主党の小沢一郎代表である。
「唐突な辞任会見」と「一夜で撤回」は、果たして「君子の豹変」か否か。
 と言うのも、豹変は「君子」だけでなく「ヤクザ」もするからである。
 こんな例がある。
 商店主のAさんが地元のヤクザ兄ィと親しくなり、一緒に飲む仲になった。
 で、いつものように、お互い軽口を叩きながら飲んでいたところが、
「何だと! もういっぺん言ってみろ!」
 兄ィがいきなり〝豹変〟した。
「な、何か気にさわるようなことを言ったのなら……」
「バッキャロー! 何かじゃねぇだろ! この野郎! ナメた口ききゃがって頭くるぜ! テメエ、わかってんのか!」
 怒声を浴びせ、Aさんは事情がわからず、ただオロオロしてあやまり続けたのである。
 ヤクザが〝豹変〟する一例だが、彼らが豹変する原因の多くは、「ナメられた」と感じたときだ。
 Aさんのケースで言えば、「へぇ、そうなんだ」「結構やるじゃん」「よく言うよ」――親しみを込めた相槌であっても、カタギの〝タメ口〟は、ヤクザにしてみればナメられていることになる。
 相手の狎(な)れを放っておくと、本当にナメてかかるようになる。ヤクザがナメられたら渡世は張れない。
 だから兄ィは、
「何だと! もういっぺん言ってみろ!」
 わざと〝豹変〟して見せ、
(忘れんなよ、オレはヤクザだぜ。怖いんだぜ)
 ということをAさんに再認識させたという次第。
 Aさんは、豹変した兄ィの態度にコトの重大さを悟り、
(この人と口きくときは気をつけなくては大変なことになる)
 と、超えてはならない一線を改めて思い知らされることになったのだ。
 小沢一郎はどうか。
「バカ野郎! てめぇら、オレの言うことが聞けねぇなら、代表なんか辞めてやる!」
「エエエ――ッ! お願いです、辞めないでください! これ、このとおり土下座でも何でもしますから、辞めないでください!」
 ナメんなよ――と豹変して不意をつくから、民主党執行部は浮き足立ち、何だかよくわからないまま、「やめないでコール」になってしまうのである。
 小沢一郎のこの豹変は「君子」か「ヤクザの恫喝」か。
 
 諸賢はどう思われるだろうか。

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