歳時記

楽は大敵

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取材を受けるとき、私はたいてい自分から都内に出向く。
若いころ取材記者をやっていたので、「自分から動く」が習い性になっているのだろう。

場所はたいてい九段のホテルグラドパレス21Fのティーラウンジを私が指定していたが、昨年6月でホテルが閉鎖してしまった。

このホテルは規模も、道のりも、駐車場も使い勝手がよく、私の大のお気に入りだったので、これに匹敵する代替ホテルがなかなか見つからず、
「じゃ、東京へ出るのはやめるか」
佐倉市内のホテルにコロリと方針転換。

自宅からクルマで10分。
近いというのは、何と楽なことか。
楽をおぼえると、人間、元にはもどれないということを身をもって再確認しつつ、
(何でわざわざ都内へ出ていっていたんだ?)
と首をかしげているのである。

私は何事も深く考えないで行動し、あとから、
(何で?)
と反省するのだが、これも取材記者時代の習い性なのだろう。
「考える前に駆けだせ」
と、よく言われたものだ。

おかげで失敗もたくさんしたが、ラクビーボールがどこに跳ねるかわからないように、面白い出会いも少なからずあった。

まず「行動」。
このことが私の人生指針になっている。

たとえて言えば、あとさき考えずに食べもにかぶりつき、咀嚼と消化はそのあとで考えるということか。

本日、都内から記者が取材に来てくれる。
自宅からクルマで10分。
近いのは楽だが、そのぶんだけ私の行動範囲は狭まる。
「ひょっとして、楽こそ大敵かもしれない」
と反省するのだ。

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