歳時記

「量」から「質」へ

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コロナ禍と終活を兼ねて道場を処分し、学校の体育館で稽古をするようになって、現在、空手を習いに来る子は30数名と激減した。
だが、これが実に楽しいのである。

子供たちの稽古は夕方5時からなので大人はもちろん無理だが、来春卒業の大学生がひとり手伝いに来てくれる。
私にとって適正規模で、子供たちに目が行き届き、指導していて楽しいというわけだ。

かつてスケールメリットということが盛んに言われたが、コロナ禍で価値観が一変。
「大」は決してメリットではないことに改めて気がついた。

ずいぶん昔だが、懇意にしていた気学の先生が、幸福とは「器と中身」のバランスだとおっしゃったことがある。

これは私のたとえだが、大ジョッキに少量のビールでは不満を抱くが、小さなグラスに入れてキュッと飲み干せば満足する。
そういうことだ。

ざっくり言えば、
「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」
ということになるだろうか。

穴は大きすぎても小さすぎても居心地は悪いのだ。
しかるに、私たちは憑かれたように大きな穴をもとめ、せっせと掘っている。
愚かの極みである。

ただし、ここで留意すべきは、結果として甲羅に似せた穴になっているのではなく、
「自分は甲羅に似せた穴しか掘らない」
という積極的人生観である。

「掘れない」のではなく、「掘らない」のだ。

これこそが「量」から「質」へ、強固な意志をもった積極的人生観の転換だと私は思っている。

在籍者の数が減ったことで、そのことに気づく。
ありがたいことである。

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