歳時記

「自分の土俵」で人を判断

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昨日は、四十九日の法要を勤めたあと、都内で催された知人の傘寿(80歳)の祝宴に出席した。

ご遺族と人生の儚さをしんみりと語り、夕方からは一転、長寿を祝って「おめでとう!」である。
われながら複雑な心境だった。

傘寿の祝宴はにぎやかで、出席者は300名を超えていた。
全員がマスク。
8人掛けの丸テーブルは、ひとりずつアクリル板で仕切られていて、都心のホテルらしくコロナ対策はさすが徹底していた。

パーティーが苦手な私としては、隣席の方と話をしなくてもいいので、アクリル板には大助かりであった。

座が賑わったあたりで、初対面の年配男性が私に挨拶にみえた。
拙著を愛読しているとおっしゃり、お名前を告げてから、
「実は、○○刑務所に30年お世話になっていたんです」
と自己紹介された。

「ほう、30年も。それはそれは、お勤め、ご苦労さまでした」
私が思わず口にすると、

「いやいや受刑者じゃないですよ、刑務官です」
あわてて修正なさっていた。

刑務所と聞くと、すぐ受刑者と判断してしまうのは保護司だからだろう。

そういえば21年前、久しぶりに会った知人で年配の元ヤクザ氏に、
「このたび保護司になりました」
と言うと、
「ちょっと、向谷さん、なにをやったのよ」
真顔で言った。

私が事件を起こし、保護観察処分になったものと早合点したのだ。
元ヤクザならではの発想だろう。

人間は「自分の土俵」で人やものごとを判断する。
面白いものである。

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