歳時記

花粉症のため、原稿持参で連夜の〝風呂通い〟

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 先日、親父と女房と私の三人で畑へ出かけた。ジャガイモを植える時季が迫ってきたので、その準備のためだ。
 親父が指示し、女房と私が畑を耕す。親父は84歳と高齢のうえ、胸部に動脈瘤を持っているため、もっぱら〝指揮官〟というわけである。
 私はジャガイモが大好物なので、それは熱心に耕し、石灰を撒き、肥料をやって畑をつくった。しばらく寝かせ、それからジャガイモを植えるのだと、鍬を杖代わりにした〝指揮官〟がレクチャーする。
 近所に住む曾孫が遊びに来ると、一所懸命に機嫌を取る好々爺も、〝指揮官〟になると、毅然とするから面白い。
 ついでながら、親父も女房も私も花粉症である。
 三人がマスクで顔を覆い、畑を耕す姿は、ちょっと異様である。
 だが、畑仕事なら、花粉症でも何とかなるが、原稿を書くのは難儀だ。
 花粉症で鼻水がたれ、かつ詰まるため、思考力が鈍るからだ。
 非才を棚に上げ、思考力が鈍るせいするから、ますます原稿が進まなくなるという悪循環になるのだ。
 そして、こんなときに限って原稿の締め切りが続く。
 そんなわけで、風呂に入れば鼻の通りが少しはよくなるため、連夜、健康ランドへ原稿持参で出かけている。
 湯船につかり、鼻の通りをよくし、あれやこれやと頭の中で推敲し、風呂から上がると休憩室で原稿の手直しをする。
 ところが、鼻の通りはよくなるのだが、連夜とあっては、湯疲れもハンパではなく、帰宅して、そのままバタンキュー。結局、原稿は進まないということになる。
 この言い訳が通じるかどうかは、編集者が花粉症で、そのつらさを知るかどうかによるのだ。

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