昨日が、最後の検査。
まず、脚のエコー検査で血栓のチェックだそうだ。
暗くした部屋で、若い女性検査技師がモニターを注視しながら器具を動かしていく。
私は上体を起こしてベッドに座っているので、モニターを一緒にのぞくが、モノクロの乱れた画像にしか見えない。
「なにが写っているのか、ちっともわかりませんな」
黙っているのも気まずいので、私が言うと、
「血管がたくさん走っていますから」
彼女はそのあと何か言いかけたが、口をつぐんだ。
この人に説明してもムダだろうと思ったようだ。
私はそう推測し、余計なことは言わないよう口をつぐんだ。
そのあと部屋を移動して、伸長と体重測定。
なんと、伸長が2センチも縮んでいるではないか。
「ホントかね?」
「本当です」
「じゃ、加齢で縮んだんだな」
「でしょうね」
これも若い女性検査技師が、ニコリともしないで言った。
扱いにくい患者だと思っているのだろう。
ついで、肺機能の検査。
思いきり空気を吸って吐き出すというもの。
これも若い女性検査技師が、
「ハイ! 吸って吸って、ハイ、吐いて吐いて! もっともっともっと吐いて!」
なにごともムキになる私は、根性を出して息を吐きつづけていたら視界の周辺が暗くなり、ゲホゲホと激しく咳きこみ、涙が出てくる。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけないだろう」
という言葉を呑みこみ、
「ええ、大丈夫ですよ」
笑顔をつくって言ったところが、
「じゃ、もう一度やりましょうか」
冗談じゃないと胸の内でボヤキながらも、根性で息を吐きつづけ、ゲホゲホと咳き込み、涙ポロポロ。
「大丈夫ですか?」
同じやりとりがくり返されるのである。
検査が終わって、
「伸長が2センチ縮んだ」
愚妻に言うと、
「そう、歳だから」
これも素っ気ない。
「肺機能の検査は咳き込んでたいへんだった」
「しょうがないでしょう、検査なんだから」
これも人ごと。
やさしい言葉を期待するほうが間違っているのだ。
このことを再確認した検査の日であった。