「生き方」の極意

『困』という漢字

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コロナ禍、困ったものです。
一都三県の緊急事態宣言は7日に解除されるのかどうか。

私たちも困り、菅総理は大逆風にもっと困っている。

そこで、拙著『心に寄り添ういい漢字』(青志社)から転載。

■テーマ『困』

人間は逆風にさらされたときに真価がわかる、といわれます。
順風のときは、風に乗ってさえいればスイスイと気持ちよく飛ぶことができます。しかし、ひとたび逆風に見舞われると、そうはいきません。
逆風をついて飛ぶ力がなければキリキリ舞して墜落です。
だから人間の力量は、逆風でしか真価はわからないということです。

『困』という漢字は、その字形から、成り立ちはさまざまに解釈されています。

たとえば「木」が四角く囲われていることから、水も太陽も与えられない木の状態を示しているとし、「こまった」の意味に解釈するもの。

あるいは「 囲い」を屋敷の形と見立て、そのなか一杯に「木」が立っていることから、屋敷に大木が繁りすぎて「こまる」の意味にとらえる解釈もあります。

また「困」の字形を四角い枠とし、そのなかに〝止め木〟を設置して出入りを禁じるという解釈もあります。出入りが禁じられ、入ることも出ることもできなくなって「こまる」というわけです。

私は、どの説も正しいと思っています。
木が四角く囲われて太陽も水も与えられない状態は、精神的な意味で飢餓の苦しみです。
「救いの手がなく、このままでは自分はだめになる」
というあせりの『困』。屋敷に大木が繁って困るのは、しがらみという人間関係の苦しみでしょうか。
切ればいいのですが、そうもいかず、もやもやと悩み苦しむ『困』をいいます。

出入りが禁止されて進退に窮するのは、壁にぶつかった状態でしょう。
たとえば転職先の会社が見つからず、さりとていまの会社にいても将来に希望はない、といった状態で、進むこともできず退くこともできず、もがく『困』です。

どの『困』も、人生において誰もが経験し、経験しつづけることです。その『困』をいかにして解決していくか。

まさに逆風で人間の真価が問われることを、『困』という漢字は諭しているのではないでしょうか。

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