歳時記

階段昇降の予行演習

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愚妻が、半月板損傷と診断されそうだ。
膝が痛いとブツクサ言っていたが、「痩せれば治る」と言って私はとりあわなかった。

それが半月板損傷である。
「アスリートでもあるまいに、なぜ損傷するのだ」
叱責すると、
「あなたが何でもかんでも用事を言いつけるからでしょ」

私のせいにするので、
「半月版なんてケチなこと言わないで、満月版にしたらどうだ!」

元気づけるつもりで言ったところが、逆効果。
怒って、
「そうやって私のこと悪口言ってなさいよ。歩けなくなって困るのは、あなたですからね」

たしかに愚妻が歩くのに難儀したら、私が困る。
そこで、地震同様、足が悪くなったときの予行演習を思いついて提案した。

「階段を上がるときは、後ろ向きになってケツを段に乗せろ。腕、ケツ、足と動かして一段ずつ上がるんだ。降りるときも同じ要領で、一段ずつ、今度は足から降りていく」
「ちょっと、膝が痛いのに面白がってるんじゃないの!」
さらに怒った。

これが昨夜のこと。

そして、先程、所用から私が帰宅すると、
「階段を上がるのはいいんだけど、降りるのは難しいわね」

なんと、私が留守の間に、しっかりと予行演習をしていたのである。
愚妻は、生存競争を生き抜くリアリストなのだ。

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