歳時記

不毛の論戦

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 仕事をかかえ、余計ながら愚妻を伴って、館山の国民休暇村に2泊ほどしてきた。
 自宅から1時間30分で着く。
 都心に出るのと同じ所要時間で、
「ちょっと、ひと風呂」
 という気分である。
 休暇村は3階建てで、海辺に建つ。
 目の前が砂浜。
 地震が来て、津波は大丈夫か。
 ふと気になり、
「ヤバくないか?」
 砂浜を歩きながら愚妻に言うと、
「大丈夫よ。駐車場の脇を抜けて高台に避難するように、案内に経路が書いてあったから」
 避難経路?
 私はそれを知らない。
 愚妻は知っていても、それを私には教えてくれていない。
 私を置き去りにして、自分だけ逃げるつもりなのか。
「なぜ、教えぬ」
「別に」
「自分だけ助かるつもりだな」
「あなたは長生きしたくないって、いつも言ってるじゃないの」
「そういう問題ではない」
「じゃ、どういう問題なのよ」
 ちょっと、ひと風呂が、結局はいつもの不毛の論戦になるのだ。

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