歳時記

愚妻の一言

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 先日、忙しい合間をぬって、都内のデパートにカバンを買いに出かけた。
 カバンは買っても、すぐに気に入らなくなって資料入れになる。
 理由はわからない。
 そういう性格なのだ。
 それではマズかろうと、ネットでカバンを吟味し、そのブランドを取り扱っている店舗を代理店に問い合わせ、愚妻を同行させた。
 お目当てのものは在庫がなかったが、新作だというカバンを購入し、ブラブラ店内を歩いていて、ジャケット風のジャンパーが目にとまった。
「買えば?」
 愚妻が言うので試着。
 袖が長い。
「この人は手が短いんですよ」
 と、愚妻が販売の若いアンちゃんに余計なことを言うが、そこはデパートの洗練された販売員である。
「輸入ものはどうしても袖が長くっておりますから」
 と、フォローしてくれる。
「ほら、みろ。わしの手が短いわけではないのだ」
「何を着ても袖が長いじゃないの」
 愚妻も譲らず論戦しつつ、
「じゃ、これ」
 と、ハズミで購入。
「ン万円になります」
 と販売員に言われて、私も愚妻もくだらぬ論戦をしたため、値札を見ていないことにこのとき気がついた次第。
 値札を見ていたら絶対に買わなかっただろう。
 帰途、愚妻がポロリと言う。
「高級スーツが仕立てられたわね」
 そうだ。
 すべては「この人は手が短いんですよ」という愚妻の一言から始まったのだ。

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