仏間からひょいと庭に目をやると、小雨を宿して色鮮やかな赤い花が咲いている。
「おい、あの花は何だ」
愚妻を呼びつけて問うと、石楠花(しゃくなげ)だと言う。
「きれいだな。いつ植えたんだ?」
重ねて問うと、愚妻は私の顔をまじまじと見て、
「かれこれ15年になるのよ」
愚妻の懸念はわかっている。
私の頭がヨレてきたのではないかと疑っているのだ。
冗談じゃない。
私の半生は、庭の花に気づかないほどに忙しかったということなのだ。
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