歳時記

「わしは灯台である」

投稿日:

 快晴だ。
 これは暑くなるだろう。
 午後から都内で編集者と打ち合わせがある。
 着物は単衣か、それとも薄物か。
「おい、どう思う」
 愚妻に問うと、
「好きなものを着て行けばいいでしょ」
 不機嫌な声が返ってくる。
 というのも今朝、愚妻は何を思ったか、歩いて畑に出かけた。
 2時間ほどして、「クルマで迎えに来てくれ」とSOSの電話。
 暑くてフラフラになったという。
 熱中症になって倒れられると面倒なことになる。
 急いで迎えに行き、厳しく叱責したところが、
「あなたが畑をやらないからでしょ!」
 逆ギレである。
 ここまで元気なら、私を呼ぶこともあるまいにと思ったが、言うと〝火に油〟になるので黙っていた。
 畑はこれまで堪能した。
 多くのことも学んだ。
 ほかにやることもある。
 これからは、庭の〝プランター畑〟だけにしよう。
 そう言うと、
「誰がやるものよ」
 愚妻がニラむ。
 灯台は、じっとしていて点滅を繰り返すから存在意義がある。
 ちょろちょろ動いたのでは、灯台の役目を果たさない。
「わしは灯台である」
 厳かにそう告げたが、愚妻にはもちろん通じないのだ。

-歳時記

Copyright© 日日是耕日 , 2024 All Rights Reserved.