歳時記

ひそかな愉悦

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 人間は、死んだらゴミになるという人がいる。
 死に意味はないという人がいる。
 そうかもしれない。
 だが親を亡くして泣きじゃくる幼子に、そんなことが言えるのだろうか。
 死は、残った者にとって意味を持つ。
 そう考えていくと、
「お浄土へ生まれ変わる」
 という言葉は、これから死んでいく人のためよりも、むしろ残された人にとって意味を持つように思うのである。
 忙しいときに、そんなことを考えることはないと思うのだが、忙しいときに限って、余計なことが次から次へと脳裏をよぎる。
「これは、忙しいことに対する精神的逃避のなのか?」
 と、これまた余計なことを考えてみたり。
 鈴木大拙の『東洋的な見方』という本が面白く、
「寝ようか、もう少し読もうか」
 と毎晩、煩悶している。
 睡眠不足は、あらかに執筆に影響するからだ。
 だがら眠ろうと思う。
 思いつつも、
「ちょっとだけ」
 と自分に言い訳し、ページをめくる。
 私のひそかな愉悦なのだ。

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