歳時記

正月二日目の「絆」

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 正月番組がつまらない。
 私が観る番組がないのだ。
 と言っても、わざわざテレビを観ているわけではない。
 年賀状のこともあり、道場の仕事部屋へは行かないで居間のコタツで原稿を書いているのだが、居間には愚妻が居座り、テレビを観ている。
「なんだ、あの下品な芸人もどきは!」
 私が怒ると、
「うるさいわねぇ。二階で仕事をしなさいよ」
 愚妻はうんざり顔で言う。
「バカ者。絆(きずな)が叫ばれている時代、夫婦は居間で語らってこそ絆ではないか」
「わざわざ隣に座らなくても、一つ屋根の下ということでいいじゃないの」
「ダメだ」
「どうしてよ」
 愚妻が逆らうので、
「それは詭弁である」
 と、私は説明した。
 隣にいなくても一つ屋根の下、一つ屋根の下にいなくても同じ町、同じ町にいなくても同じ県、同じ県にいなくても同じ関東、同じ関東にいなくても同じ日本・・・。
「わかったか。こういう理屈になるのだ」
「絆って厄介なのねぇ」
 そうだ。
 絆とは本来、犬や馬をつなぎとめておくための綱のことを言う。
 これが転じて、人間同士の離れがたい結びつきを言うようになった。
「だから厄介な絆もあるのだ」
「ちょっと、どういう意味よ」
「二階で仕事をしよう」
 私はそそくさと腰を上げた。
 正月二日目。
 わが家は静かな波乱の幕開けである。
 

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