『一将巧成りて万骨枯る』
という、よく知られたこの言葉は、
「将軍たちよ、手柄を立てた陰に、無数の無名兵士の死があることを忘れるな」
と戒めたもので、人民を犠牲にして将軍たちが功名を争う唐末の世相を見た曹松(そうしよう)が詠んだ詩の一節だ。
世界史を紐解くまでもなく、「将」は常に「万骨」に支えられて事をなす。
天下平定も、他国の侵略もすべて、民衆や無名兵隊たちの犠牲があって初めてなしえるものだ。
ならば、
「一将の功のために、万骨を枯らしてはいけない」
と人道主義を説くべきものと思うが、曹松はそうはいわないで、
「万骨を忘れるな」
とする。
それは曹松が、
「人間社会において一将功なるためには、万骨は枯れるもの」
という前提に立つから、
「万骨を忘れるな」
と説いたのではないか、というのが、わたし流の解釈である。
中国で、高速鉄道が起き、多くの死傷者を出した。
共産党は国威高揚のため、高速鉄道の建設を急ぎ、その結果、運行システムの欠陥を招いとの報道もある。
共産党の一党支配は、犠牲者2000万人以上という文化大革命によって確立された。
『共産党巧成りて人民枯る』
いま曹松が生きていれば、そんな言葉をつぶやくことだろう。
一将巧成りて万骨枯る
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