歳時記

スマートフォンを買い換える

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 スマートフォンを買い換えることにした。
 WiMAX搭載のやつだ。
 画面も従来のものより大きくなっている。
 で、ショップへ行ったら、
「製品を貸し出すますので、エリアチェックをしてください」
 浴衣を着た娘さんが、思いもかけぬことをニッコリ笑顔で言う。
「エリアってどこよ?」
「いつもご使用になる場所です」
「いつも使用する場所なんて、ないんだけど」
「ないんですか?」
「ない」
「ホントに?」
「日本中、移動するから」
「困りましたね」
「まったくだ」
 気のいい娘さんで、本当に困っている。
「ちょっと」
 脇から愚妻がヒジで突っつくので、マジな話にもどす。
「九十九里の白子に仕事部屋があるので、そこで使えないと困るんだ」
「あら、白子は私の姉が嫁いだ先です」
「あっ、そう。いいところだよね」
「はい」
「魚はうまいし」
「そうなんです」
「海だって」
「ちょっと」
 再び愚妻がヒジで突っつくので、話をもどす。
「白子へ行かなきゃだめかい?」
「はい」
「ネットでわかるんじゃない?」
「それが、同じエリアでも場所によって微妙に違いますので」
「わかった。行ってみるよ」
「使えるといいですね」
 彼女が心配そうな顔をしたので、私は言った。
「それって、違わない?」
「はっ?」
「使えなくて困るのは、私に製品を売ることができなくなるキミなんだよ」
「そうですね」
「うん。だからキミの言い方は間違って・・・」
「ちょっと」
 またまた愚妻にヒジで突っつかれ、ショップをあとにしたのだった。

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