歳時記

畑に水をやらねばなるまい

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「畑がカラカラに乾いとる」
 今朝、畑から帰ってきた映芳爺さんが、愚妻に告げている。
「水をやろう思うても、わしは息が切れるけんのう」
 私に言って聞かせているのだ。
「おい、水をやってくれ」
 と私に言えば、これは「依頼」になる。
 そこを巧みに避けて、
「わしは息が切れるけんのう」
 と、何度も繰り返すのだ。
 魂胆はわかっているが、そこまで言われたらしょうがない。
「そいじゃ、明日、わしが水をやりに行くけん」
 と言うと、
「忙しいんなら、無理せんでもええど」
 すっと引いてみせ、
「大丈夫じゃ」
「ほうか、それならええんじゃが」
 何だか、私のほうから頼んで水をやりにいくハメになったという次第。
 今日は、これから埼玉支部のティロン君が稽古にくる。
 コックさんだ。
 2、3年のうちにスリランカに帰り、向こうでコックの仕事をするつもりだが、空手道場もやりたいと言う。
 それで、特訓のため、仕事休みの日に私のところへ稽古に来るというわけだ。
 彼の熱心さには応えなければならない。
「いつもヒマそうねぇ」
 と愚妻は揶揄(やゆ)するが、畑の水もやらねばならず、私もこれで結構、忙しいのである。

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