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俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

「宮本武蔵」と「菅総理」

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 人気ナンバー1の剣豪と言えば、宮本武蔵である。
 すでに江戸時代、英雄として演劇化されているが、武蔵を国民的ヒーローにしたのは、吉川英治の『宮本武蔵』である。
 ひたすら剣の道を追い求める孤高の生きざまが日本人のメンタリティーに合って、武蔵ブームを巻き起こした。以来、小説、映画、演劇、テレビドラマの定番となっているのは周知のとおりだ。
 私も武蔵は嫌いではない。
 だが、
「それにしても」
 と首をかしげるのは、巌流島の決闘である。
 佐々木小次郎を倒し、これによって宮本武蔵の名は天下に轟くのだが、約束の時間にわざと一刻(二時間)も遅れて小次郎を焦(じ)らす戦法は、およそ正々堂々とは言い難いにもかかわらず、ヒーローになっている。
 本来なら、姑息な手段として日本人がもっとも嫌うタイプだろうに、武蔵は英雄として絶大なる人気を博しているのである。
 なぜか。
 勝ったからだ。
 この世は、常に「勝者が正義」なのである。
 逆を考えてみればわかる。
 もし武蔵が、小次郎に〝燕返し〟で斬り捨てられたとしたらどうだったろう。
「正々堂々と戦えばいいものを、姑息なことをして」
 と、武蔵を嘲笑したことだろう。
 
「勝てば英雄、負ければ卑怯者」
 というのが「人間評価の基本」なのである。
 武蔵は剣の求道者というイメージが強いが、実は徹底したリアリストで、かの『五輪書』に、
《物毎(ものごと)の損得をわきまゆること》
《役に立たぬ事をせざる事》
 と、記(しる)している。
 損得を考えて行動せよ、とは、求道者らしからぬ言葉であるが、ここまで徹底しなければ勝負には勝てないということでもある。
 菅首相が10月訪中で調整に入ったとメディアが報じている。
 8月退陣どころか、続投意欲満々である。
 野垂れ死にすれば嘲笑だが、この先政権を維持するようでは「勝者が正義」ということもあり得るのだ。
 

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