歳時記

「自分に打ち勝つ」と言うこと

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 病気になっても、自分では治せない。
 不安に襲われたとき、それを払拭するのは至難のワザだ。
 自分の身体でありながら、自分の心でありながら、「自分」は「自分」に対して、まったく無力なのである。
 お釈迦さんの言葉に、
《何ものも「自分のもの」ではない、と知るのが知恵であり、苦しみから離れ、清らかになる道である》
 というのがある。
「執着するな」
 という意味だが、
「何ものも」
 ということは、自分の身体も心も自分のものではないということで、
「このことを知れ」
 とお釈迦さんはおっしゃるのだ。
 身体も心も自分のものでない以上、病気も、喜怒哀楽もコントロールできないのは当然ということになる。
 したがって、
「どうにもできないものを、どうにかできる」
 と錯覚するところに悩みが生じるのだろうと、私は考える。
 以上のことから、
「自分に打ち勝つ」
 とは、
「《自分》は自分のものではない」
 ということを真に知ることではないだろうか。
 そのことに気づかずして、空手の修行に励んでも、あるいは精神修養をいくら積んでも、自分に打ち勝つことなどできないと反省するのである。

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