私と愚妻は、「言った」「聞いていない」という論争が日常茶飯事である。
先日、午後から雨が降ったときもそうだ。
私は所用で外出していて雨に濡れたので、帰宅して愚妻を厳しく叱責した。
「なぜ、雨が降ると言わんのだ。テレビで天気予報をチェックするのは、妻たる者の重要な責務ではないか」
「だから言ったでしょ。傘を持っていけばって」
「聞いておらん」
「言ったわよ」
「バカ者!」
一喝して、
「いいか、《言う》は《相手に伝える》ということだ。わしが聞いておらんということは、おまえの言葉がわしに伝わっていないということになる。したがって、《言った》は成立せんのだ」
これで私の完勝だと思ったら、違った。
愚妻が反論するのだ。
「《聞く》というのは、《相手の言葉を受けとめる》ということでしょう。私がしゃべっているのに、あなたが受けとめていないんだから、《聞いていない》は成立しないんじゃないの」
なるほど。
これは、矛盾である。
矛盾である以上、結論は出ない。
「言った」「聞いていない」論争が不毛であることが、ようやく腑に落ちてわかった。
そういえば、菅サンと鳩山サンの〝総理引退話〟も、とどのつまりは「言った」「聞いていない」ではないか。
不毛であるはずだ。
不毛の論議
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