この時期は、入会してくる子供が多くなる。
また、道場について問い合わせの電話もよくある。
「うちの子は気が弱くて・・・」
「空手を習わせれば、礼儀がきちんとできるのではないかと思いまして」
たいていお母さんが電話を掛けてくるのだが、お母さんたちの話を聞いていると、子を持つ親の愛情というものをひしひしと感じる。
育児放棄や児童虐待などが連日のように報道されていて、
(いまの若い親は何を考えているんだ!)
と憤りをおぼえるだが、こうして道場に電話を掛けてくる若いお母さん方と話せば、
(まだまだ日本の母親は捨てたもんじゃない)
と、うれしくなってくるのである。
仏教の根幹は「慈悲」である。
慈悲とは、ひらたく言えば「人の痛みを、我が痛みとする心」のことだ。
そして慈悲は、「自己責任」と対極にある。
たとえば、
「勉強しなさい!」
と母親叱り、子供が遊んでばかりいて勉強しなかったとする。
その結果、テストの成績が悪いと、母親はこう言って叱る。
「ほら、言ったじゃない! 勉強しないあなたが悪いのよ!」
すなわち「自己責任」を問うわけだ。
だが、母親に「慈悲の心」があれば、きっとこう思うだろう。
(勉強することの大切さに気づけない我が子がかわいそう・・・)
母親VS子供という「対立の関係」でなく、「寄り添う関係」ということになろうか。
昔から「母の愛は海より深い」と言うが、まさに母親の慈悲の心を言うのだと私は思う。
甘やかすこととは違う。
過保護とも違う。
寄り添うとは、「真に子供を思う心」だ。
真に子供をのことを思えば、叱りもすれば手も上げるだろう。
誉めることもある。
そんな母親であって欲しいと、道場生の母親を見るたびに、私は願うのである。
「母の愛は海より深い」を考える
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