今日、1月6日は「出初(でぞ)め式」である。
起源は江戸時代。
花のお江戸は火事が頻発し、幕府によって〝火消〟が制度化されていった。
江戸人の人生観は
「人生、物見遊山」
というもので、家具などモノを持たず、お金は芝居など遊興につかったとされるが、
「モノを持ったって、火事で焼けりゃ、何にも残らねぇ」
という思いが、この人生観の背景にあったのだろう。
だが、火事が頻発したおかげでモノに囚(とら)われず、精神的に豊かな人生を送ることができたのだから、何が幸いするかわからないものである。
そういえば、おふくろが生前、
「火事は怖い」
とよく言っていた。
「泥棒はモノを盗るだけだけど、火事はすべてを灰にしてしまうから」
というのがその理由で、なるほどうまいことを言うと子供心に感心したものだが、いま考えると、これはモノに囚われているがゆえの恐れということになるだろうか。
ぐるっと人生をひと回りして還暦になったせいか、昔、ひょいと耳にした言葉、あるいは何気なく目にした光景がよみがえってきては、
(なるほど、あれはこんな意味ではなかったか)
と、いろんなことを考えさられるのである。
毎年、テレビで「出初め式」のニュースを見ているが、昨年までは、
(フーン)
という思いしかなかった。
しかし今年は、
「火事はすべてを灰にしてしまう」
という、おふくろの言葉を不意に思い出しつつ、
(モノは焼けても灰になるだけですむが、心が焼けたらそうはいかないだろうな。〝心の火事〟だけはくれぐれも気をつけなければ)
そんな思いが、ふとよぎる。
いま、午前3時。
原稿が一段落したところだ。
風呂に入るか、ベッドに入るか。
迷いつつ、このブログを書く。
今日は「出初め式」
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