抜けるような青空である。
「よし」
と思い立って、
「支度だ、急げ!」
愚妻に命じ、
「行くぞ!」
畑指南役である87歳の親父に告げた。
畑仕事を除けば〝小人閑居〟の指南役は、
「おう」
と、もちろん二つ返事。
一方の愚妻は、
「行っても、収穫するものはないんでしょう」
と、現実的なことを口にしてブーイングだが、
「収穫があるから行く、ないから行かないという考えはよくない」
と詭弁を弄してクルマに押し込んだ。
ま、実際、畑へ行ってもすることはないのだが、畑のそばに小屋を建て、日中はここに〝常駐〟している「畑大指南役」のSさんがコーヒーを入れてくださり、庭先で歓談。
「いい天気ですなァ」
と、S大指南役が青空を仰げば、
「ホンマですなァ」
と、ウチの指南役が空を見上げ、
「師走じゃないみたいですね」
と愚妻も仰ぎ見る。
私も何か言わなければと思い、
「真冬に、こんなに暖かくていいんでしょうかねぇ。世界的に天変地異が起こっていますが、ひょっとして正月あたり、大地震でも来るかもしれませんよ」
愚妻がイヤな顔をした。
どうやら私は、のどかな会話の腰を折ってしまったようだ。
「しかし、いい天気ですなァ」
あわてて空を見上げだが、3人とも冷ややかな視線で私を見たのだった。
昨日も今日も、いい天気だ。
だが、やはり〝いい天気すぎる〟ような気がする。
冬は冬らしく、寒さに身体を震わせるのがよいと、私は思うのである。
冬は、冬らしくありたい
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