歳時記

難儀な時代になったものだ

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 昨夜は、さしもの私も驚いた。
 稽古が始まる前のことだ。
 椅子に座る私のまわりに、小学校低学年の女の子たちがまとわりついて、
「館長、歳はいくつ?」
 とか何とか言って、私をからって楽しんでいた。
 私から見れば孫たちのようなものなので、からかわれるのはいっこうに構わないのだが、準備体操が始まってもキャッキャッと遊んでいる。
 これはよくない。
 ケジメは大切なので、
「ほら、準備体操しろ!」
 私が怒鳴って、女の子のケツをパンと叩くや、
「あッ、館長、エロ!」
「エロ!」
「エロ!」
 囃し立てるように言ったのである。
「なんだ、それ」
「知らないの? 女の子のお尻を触るのはエロなんだよ」
 私は唸(うな)った。
 唸ったまま返答につまり、ますます唸った。
 自分たちは私の背中に飛びついたり、スキンヘッドに触ったり、尻に蹴りを入れたりと勝手放題をしていながら、なんたることを言うのか。
 まさか低学年の女の子の口から、こんな〝からかい言葉〟が出てこようとは思いもよらないことだった。
 意味もわからず口にしているのだろうが、なんとも難しい時代になってきたものではないか。
 そのうち医者だって、女の子には聴診器を当てられなくなるだろう。
 いやホント、難儀な時代なのである。  

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