歳時記

〝錦の御旗〟で我田引水

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 参院厚労委で、野党三党が雇用関係4法案を強行採決した。
 法案の内容はともかく、
「強行採決は横暴だ!」
 と自民党が喚(わめ)いたのには驚いた。
 これまで、さんざん強行採決してきたのは自民党ではないか。
 一方の野党もしかり。
 これまで自民党の強行採決を非難しておいて、
「この法案は緊急性を要するものと判断した」
 と、自民党が強行採決のたびに口にしたセリフで応酬する。
 民主党の菅直人代表代行など、
「強行採決ではない、迅速採決だ」
 と、〝モノは言いよう〟のお手本のような反論である。
 
 メディアは、「攻守ところを替える異例の展開」などと、プロレス中継のようなノンキな報道をしているが、自民党にしろ野党にしろ、強行採決こそ、まさに「目的は手段を正当化する」という見本なのだ。
 すなわち、
「国民にとって、この法案は緊急課題である。ゆえに強行採決をした。どこが悪いんじゃ」
 という論法で、「強行採決」という《悪》は、「国民にとって」という《正義の目的》と抱き合わせることによって、コロリと《正義》にすり替わるというわけである。
 となれば、ドジを踏んだときは、大急ぎで〝錦の御旗〟をみつくろえばいいということになる。
「あなた! また飲んで帰ったの!」
「ごめん。でも、我が社はいま経営危機なんだ。リストラされないようにと部長のお供をして……。オレ、飲みたくて飲んでるんじゃない、家族のために飲んでるんだ」
 こう言われれば、カミさんも怒れまい。
 むろん、本当に部長のお供であったかどうかは関係ない。
 あるいは、デートの食事代を競馬でスッた学生サン。
「ごめんよ。バイト代、競馬でスッちゃった」
「どうしてよ!」
「キミに指輪をクリスマスプレゼントしたくて……。バイト代じゃ、とても買えないから」
 こう言われれば、彼女もそうは怒れまい。
「憎くてキミをリストラするんじゃない。会社がつぶれたら元も子もないんだ。わかってくれ」
「冗談じゃない! 会社が生き残って、われわれ社員が路頭に迷ったのでは、なんのためのリストラですか!」
 それぞれが〝錦の御旗〟を振りかざして、我田引水をはかる。
 世に言う《正義》とは、こんなものなのだ。

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