歳時記

一億総辞任の時代

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 昨日は、保護司会の研修で少年鑑別所へ出かけ、夕方帰宅して孫二人を保育園に迎えに行き、二時間ほど仮眠をとって原稿を書き始め、何となく気になってインターネットでニュースをチェックしたら、
「福田首相、辞任」
 階下の居間に降りて、
「おい、福田が辞任だってな」
 女房に言うと、
「そうよ。サミットが終わったから、あとはどうでもよくなったんじゃない」
 ずいぶんと醒めていた。
 世間の反応も、
「エッ!」
 と驚いて、たぶん、あとは苦笑いだろう。
 人ごとのように一国の舵取りをしてきた首相が、人ごとのように「やーめた」と言ったのだ。苦笑いするしかあるまい。
 ただし、その苦笑いは、福田首相に対してではなく、こんな無責任な男を首相とした我々国民に対して苦笑いなのである。
 まっ、それはそれとして、最近の風潮として、「辞任」がずいぶん安易になってきたような気がする。
 かつて「辞任」といえば、切腹と同じくらい重い意味を持った。辞任は社会人として終止符を打つことであり、〝負け犬宣言〟である。
 それがホイホイと辞任するようになったのは、食品偽装など一連の企業不祥事からではないだろうか。
「責任をとって辞める」
 と言えば聞こえがいいが、矢面からトンズラしただけのことなのだ。
 いや、辞任だけではない。
 就職も、結婚も、趣味も何もかも、ちょっと壁にぶつかると「やーめた」である。
「辛抱しなさい」
 と言うと、
「辛抱? それって人生のムダじゃん」
「違う、ムダなんかじゃない。石の上にも三年。辛抱する木に花が咲くと言ってだな……」
「バッカみたい」
 ま、こんな反応ですな。
 いよいよ「一億総辞任の時代」が始まったのだと、私は思う。
「責任とって辞めます」
「いやいや、私のほうこそ辞めさせていただきます」
「とんでもない、私が辞めると言ってるじゃないですか」
 これぞ、沈没船からネズミが逃げ出すがごとく、日本という船が沈む前兆かもしれない。
 そう言えば、福田首相、ゲゲケゲの鬼太郎に出てくる〝ネズミ男〟に似てませんか?

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