歳時記

福田訪米と「主権なき日本」

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 福田首相は、アメリカへ何しに行ったのだろうか。
 周知のように、拉致問題について、「制裁解除の中止」をブッシュ大統領に談判することなく帰ってきた。
 このことについて、メディアは失望と批判的な記事を掲載したが、私が理解できないでいるのは、
「なぜ福田首相は談判しなかったのか」
 ということである。
 メディアは「談判しなかったこと」を報じてはいても、「なぜ談判しなかったのか」という理由については触れていないのだ。
 福田政治の本質は、まさにこの一点にあると、私は考える。
 制裁解除中止に触れなかった理由は、以下の3つの仮定が考えられる。
 ①双方の事務レベルで、「談判」しないよう打ち合わせができていた。
 ②福田首相はブッシュ大統領に申し入れたが、それについては双方とも、公表を差し控えた。
 ③福田首相が、ブッシュに拒絶されるのを恐れて、曖昧な言い方しかしなかった。
 そのいずれであるのか、メディアは取材し、報道すべき義務があると思うが、どうだろう。
 拉致問題とは、「日本国民が、北朝鮮の工作員によって、日本国内から暴力で連れ去られた事件」なのだ。
「同朋を帰せ!」
 と談判し、謝罪させ、制裁を加えるのが当然ではないか。
 もし同様の事件がアメリカで起これば、ブッシュ大統領――いやアメリカ世論はどうだろうか。間違いなく戦争だ。イラク戦争を見ればわかるではないか。「民主主義を守る」という理由だけで、攻め込んだのだ。自国民が拉致されて黙っているわけがない。
 しかるに、なぜ日本政府は指をくわえて黙っているのか。
 こういう意見に対して、福田首相は、きっとこう言うだろう。
「政治はそう簡単じゃないんです。北朝鮮と戦争になったらどうするんですか。大変な犠牲者が出ますよ。それでもいいんですか」
 だから話し合いが大事だ、と。
 だが、どう言い繕ってみても、これは「負け犬の論理」なのだ。
 こんな例を考えてみれば、わかる。
「いま会社の不正を追及して、会社そのものが潰れたらどうするんだ。事態の推移をよく見極めて対処する必要がある」
「相手が悪いのはわかっている。でも、それを批判して問題がこじれたらどうするんだ。ここは辛抱して、慎重に事を運ぶべきだ」
 要するに、もっともらしい理由をくっつけて、問題を先送りをしているだけなのである。
 北朝鮮と戦争をすべきだと言っているのではない。
 それだけの覚悟なくして、主権は守れないと言っているのだ。
 歴史を見るがいい。
 主権なき国家は、戦争以上の犠牲を強いられるのである。
 福田首相はなぜ、拉致解除中止の談判をしなかったのか。
 この一点に、福田政治の本質があるとするユエンである。

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