歳時記

コスモスの笑顔

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 私はコスモスが好きだ。
 三年ほど前、不意に好きになった。
 それも、カタカナではなく、秋桜と書くイメージがいい。
 好きになった理由は、特にない。
 要するに気まぐれなのだが、あえて理由をあげれば、茎がひょろりとして頼りなく、花弁の色彩もクレヨンで塗ったような、安っぽい感じが親しみやすくていい。
 大輪の菊や胡蝶蘭は植物界のセレブで、美しいが近寄りがたい。こんな花を自宅に飾っていたら、気になって落ち着かないだろう。
 そんなわけで、昨日はカミさんと一緒にクルマで二十分ほどの「コスモス畑」へ行った。
 一面、赤白ピンクの秋桜が咲き誇り、きれいだった。
 五十も半ばを過ぎて、花を愛でる楽しさがわかるようになってきた。
「どうだ、我が家の庭にも花を植えみたら」
 カミさんに言うと、私の顔を無言で凝視してから、
「あなた、うちの庭は花だらけなのよ」
 
 言われてみて、ハッとした。
 そういえば、今年は一度も庭に下りていないことに思い至った。
「庭が玄関の反対にあるのがいかんのだ」
「玄関だって、鉢植えの花がたくさん咲いてるじゃないの」
 私は沈黙する。
 私の視線の先で、秋桜が頭をそろえて、ゆらゆらと風に揺れている。
 みんなで私を笑っているように見えた。
    

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