歳時記

もの言えば唇寒し

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 よく寝た。
 九十九里の仕事部屋である。
 昨日は午前中、杉並支部へ出かけて稽古、夕方から自分の道場で稽古。
 6時間も身体を動かしたのだから、ぐっすり眠るのは当然である。
 ところが愚妻は、私のイビキを指摘して、こう言うのだ。
「起きててもうるさいけど、寝ててもうるさいのね」
 こういう愚かな女と、36年も連れ添っているのだ。
 私は黙して語らず。
「風呂のあとは、どっちの店に行こうかしら」
 愚妻が、しきりに悩んでいる。
 魚料理屋とソバ屋に、愚妻専用のボトルがキープしてあるのだ。
 私は黙して語らず、隣室に行って、こうしてブログを書いている。
「ちょっと、コーヒーが入ったわよ」
 愚妻が告げる。
「パンにする? 梨(なし)にする?」
 なぜ、パンと梨が並列になるのか。
「バカ者!」
 と言おうとして、やめた。
「うるさいわね」
 という怒濤の猛反攻がわかっているからだ。
 残暑は厳しいが、かくごとく、ものを言う唇は寒いのだ。

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