この夏、無性にアサガオが見たくなった。
で、6月だったか。
「おい、アサガオだ」
と愚妻に命じて準備させた。
愚妻はヒモのようなものを組み合わせ、アサガオの蔓を伸ばす簾(すだれ)のようなものをこしらえた(よく見ていないからわからない)。
ところが、そのことをコロリと忘れ、
「おい、アサガオはどうした」
と今朝、愚妻に言ってしまったのである。
女の顔が、あれほど歪(ゆが)むということを、私はこのとき初めて知った。
「ちょっと!」
あとは書くまい。
私は、今年は一度も庭に出ていない。
それほど忙しいのだ。
アサガオどころではないのだ。
そのことを丁重に愚妻に告げたところが、火に油。
「だったらアサガオなんて言わなきゃいいでしょう」
「もっともだ。では、秋はコスモスにする。頼むぞ」
「ちょっと!」
あとは書くまい。
アサガオが見たくて
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