歳時記

「天上天下唯我独尊」

投稿日:

ここ三日、左腰の痛みである。
折りに触れてこのブロクでも書いたが、筋を捻ったような激痛が走り、動けなくなる。
いくつか整形外科医に診てもらい、レントゲンだのMRIだのを撮ったが、痛みの原因は不明で、医者は首をかしげるばかり。

だけど、動けなるくらいに痛むのは厳然たる事実。

腰痛の原因として「脳の誤作動」という見立があり、ならば、
(誤作動だ! 腰など痛くない!)

我が身に言い聞かせてはみるが、ちょっと動くだけで、
「痛テテテテ」

膝を折ってしまうのである。

それでも昨夜と今日は通夜・葬儀が入っている。
唸っている場合ではない。

「ちょっと、大丈夫なの?」
愚妻が言うが、心配している様子は微塵もない。

カチンときて、
「大丈夫じゃないと言ったら、どうする気だ」
「そんなこと、私にわかるわけないでしょ」

あっさり切り返してから、
「用もないのにウォーキングに出かけるのが悪いのよ」

論理を無視した非難を浴びせるのである。

それでも通夜・葬儀は何とか勤めた。
そして帰宅した今夕、腰をかばいつつ、ゴロリと仰向けになってテレビニュースを見ていると、
「人間、誰しも秀(ひい)でた部分がある。だから卑下するな」
といった放送をしていた。

この考え方は、
「あなたは、あなたであることにおいて尊い」
というやつだ。

お釈迦さんが生まれたとき、七歩進んで、
「天上天下唯我独尊」
と言った言葉で語られる。

ふと、ソファでふんぞり返っている愚妻を見やり、
「おまえさんの素晴らしいところって何なんだ?」
質問してみた。

「たくさんあるじゃないの」
「たとえば?」
「そんなこともわからないの」
「わからないから、こうして尋ねておるではないか」

愚妻の頬がヒクヒク動いた。

「じゃ、あなたの素晴らしいところは何なのよ」
「見て、わからないのか」
「わからないから、訊いているんじゃないの」

売り言葉に買い言葉。
不毛の論戦になってしまった。
まったく、お釈迦さんも罪なことを言ったものではないか。

-歳時記

Copyright© 日日是耕日 , 2025 All Rights Reserved.