歳時記

紅葉か、冬枯れ色か

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埼玉県の山間部にある温泉に1泊で行ってきた。
連泊したいが、何だかんだ用事があり、そうもいかない。

それに埼玉なら自宅から2時間ならだ。
近所の日帰り温泉の延長だと思えば、ま、いいか。

最上階の露天風呂に浸かって、秩父の山々を眺める。
鮮やかな紅葉はない。
終わったのか、もともと美しく紅葉はしないのか。

木々は〝冬枯れ色〟である。

新緑はみな青々として美しいが、晩秋の木々は鮮やかに紅葉するか、冬枯れ色になるかでまるっきり違う。

人間の青年期と晩年のようではないか。
晩年は見事に紅葉すべきだ。

そんなことを思い、愚妻にそのことを話しておいてやろうと部屋にもどると、
「ちょっと、大吟醸と純米と、どっちがいいかしら?」
地酒のメニューを見ながら待ちかねたように問う。

私もつられて、すぐさまパソコンでチェック。
「大吟醸のほうがいいな。辛口だから、おまえの口に合う。いや、待てよ。岩魚(イワナ)の骨酒もあるぞ。熱燗でやるといいんじゃないか」
「おいしいかしら?」

話して聞かせようと思っていた人生論はどこへやら。
私はきっと冬枯れ色になって老い、愚妻は死ぬまで紅葉していることだろう。

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