「うまくいったら自分の手柄。失敗したら人のせい」
良くも悪くも、これが現実である。
だが、うまくいったときは、
「オレ、オレ!」
と、指で我が鼻をさしていればいいが、問題はドジったときだ。
身を縮め、じっと隠れていただけではダメ。
「あいつが悪い!」
と、火の粉を頭からかぶって火ダルマである。
だから、ドジったときは、
「悪いのはあいつだ!」
と、いち早く他人に火の粉を振りかけることで責任を回避する。
その典型が、例の新東京銀行だ。
石原慎太郎都知事が、この新銀行を立ち上げたときは「石原銀行」と呼ばれ、石原都知事もニンマだった。
新銀行が成功していれば、
「オレ、オレ」
と自分の鼻を指さし、「石原銀行」と、ずっと呼ばせただろう。
うまくいったら自分の手柄――である。
ところが、大失敗。
パンク寸前である。
で、石原都知事は、いち早く火の粉を避け、
「悪いのはあいつだ!」
と叫び、新・旧経営陣を指さした。
「心外だ」
「慚愧に堪えない」
「私は何も知らなかった」
火の粉を、新・旧経営陣にバンバンかけまくっている。
失敗したら人のせい――である。
これがもし、他府県で創設された銀行だったら、石原都知事は何とコメントするだろう。
「知らなかった? バカ言っちゃいかんよ。知らなかったということ自体、トップの怠慢じゃないか!」
吐き捨てるように、こう言ったろう。
さて、実は、この「あいつが悪い」には応用がある。
たとえば、防衛省がわかりやすい。
イージス艦「あたご」の衝突事故の流れを見ていると、衝突原因の究明と平行して、
「大臣への報告が遅すぎる」
と危機管理の問題がやり玉にあげられ、隠蔽体質に世間の非難が集中している。
衝突事故の本質の第一義は、「衝突の原因を探り、再発防止」にあるにもかかわらず、「隠蔽体質」に問題がすりかえられ、政争の具にされている。
政争の具にしているのは野党のみならず、防衛省や政府内の権力闘争が見え隠れするが、要するに手法は「悪いのはあいつ!」の応用なのである。
これを私たちに則して言えば、
「キミの失敗を責めてるんじゃない。その態度を私は怒っているんだ!」
「あなたの浮気を責めてるんじゃないわ。騙し続けたことを怒ってるのよ!」
防衛省の問題と同質であり、「本質」はうやむやになるのだ。
とすると、ドジを踏んだときに、逆手を取ってこう言ったらどうか。
「浮気したボクが悪い。でも、もっと悪いのは、そのことをキミに隠し続けてきたことだ。ゴメン」
問題の本質を「浮気」から「隠していたこと」にすり替えれば、傷を最小限に抑えることができるのだ。
先程、ニュースで石原都知事のコメントを聞きながら、ふとそんなことを思った次第。
ドジを踏んだら、石原都知事を見習え
投稿日: