暑くなった。
スキンヘッドは、日差しが大敵だ。
だから、帽子やバンダナはたくさん持っているが、それでも新しいのが次々に欲しくなる。
「帽子は、一度に一つしかかぶれないのよ」
と、愚妻はあきれるが、欲しいものは欲しいのだ。
で、黒いシープスキンのハンチングを買った。
先ほど、配達されたハンチングをかぶり、鏡に写して見ていると、愚妻が汗びっしょりになって帰ってきて、言った。
「ちょっと、私がこうして畑に行っているのに、あなたときたら、涼しい部屋でノンキに帽子をかぶって・・・」
「スマン、スマン」
すぐに、あやまった。
火は消火するもので、油を注ぐのは愚の骨頂なのだ。
「さっ、早く風呂へ入れよ」
と気づかったまではよかったが、
「わしは、もう入ったから」
の一語は余計だった。
愚妻は、キッと目に力を入れて、
「いいわねよ、朝風呂に入って、帽子かぶって。私なんか、朝から畑でフーフー言っているのに」
余計な一語で、火に油をそそいでしまい、消火活動は難航するのである。
火事の元は、マッチ一本とは限らないのだ。
ハンチングを買う
投稿日: