歳時記

目論見は見事、失敗

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愚妻にわざわざ意見を聞くことがある。
私の関心事に巻き込むときだ。
得意になって意見を言わせ、その結果としてカネを出させるのが狙いである。

「日帰り温泉の送迎は、着替えが簡便なものがいいように思うが、どうだ」
「そうねぇ。スエットの上下なんかいいんじゃない?」
「しかし首まわりが伸びるとイヤだな」
「高いやつを買えばいいじゃない」
「しかし、わしはビンボーだ」
「買ってあげるわよ」

こういう運びなるのだ。

で、過日。

「今年はちょっくら南九州に行ってこようかと思っているのだが、どうだ」

そう言って、目的地が写ったウェブの写真を見せた。

私の腹づもりは、
「何しに行くのよ?」
と質問させ、「取材」だと答えて、じわりじわりと旅費を出させるようにもっていくことだ。

ところが愚妻は質問など一切せず、

「ヘビが出そうね」

パソコン画面の写真を見て、開口一番に言った。

なるほど、人里離れた山間部だ。
そこまで気が回らなかった。
私はヘビが大嫌いなのだ。

「出るかな?」
「出るに決まってるじゃない」
「なんでわかるんだ」
「田舎に行けばヘビは日本中にいるんだから」

確かにそうだ。
それでも念のため、急いで彼の地におけるヘビの生息についてネットで調べると、冬場を除いて通年の生息である(当たり前だけど)。

にわかに行く気が失せた。

「やめよう」
「どうして? 行ってくればいいじゃない。何の用事か知らないけど費用なら出すわよ」
「いや、いい」
「行きなさいよ。ヘビに噛まれたからって何なのよ!」

私の心情を察した愚妻が、いたぶるように攻めてくる。
悪い女だ。

「行かん! ヘビのいるところは行かん!」

ヘビのおかげで、今回の私の目論見は見事、失敗に終わったのである。

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