歳時記

張りつめた弦

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過労による鬱病発症のニュースを観ていて、愚妻が言う。

「どうして働き過ぎると鬱病になるのかしらねぇ」

ノンキもここに極まれりである。

愚妻は膝痛で病院に通っているが、過日、娘が拙宅に来たとき愚妻に言ったものだ。
「何にもしていないのに、どうして膝が痛くなるの?」

これに愚妻はいつまで憤慨していた。
娘の見立が正しいが、それを言うと私が非難されるので、ここは愚妻の肩を持っている。

それはともかく、愚妻は過労に対する認識が甘いので、お釈迦さんの「弾琴」のたとえを持ち出して説明してやった。

「釈迦は言った。『張りつめた弦では切れてしまう。緩めすぎては音はならない。中庸こそが肝心である』とな。働き過ぎは張りつめた弦のようなもので、切れると鬱病になるのだ」

そして、「この私も働き過ぎで」と続けようとしたら、
「あっ、そういうこと。あなたは弛めすぎだから音が出ないのね」

私は毎日、予定表と睨めっこしているというのに、ノンキなことを言うのだ。

この忙しさだと、紅葉を見に行くのは無理か。
ゴッホ展には行きたいと思っているが、さてどうなるか。

今年もあと30日。
幸か不幸か、私の「弦」はいささか太いようで、張りつめても今のところは容易に切れそうもないのだ。

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