ジャニーズ事務所が火ダルマだ。
地球温暖化で北極の氷河が融(と)け、崩落していくのを見るようである。
もっとも、大手芸能プロとメディアの力関係は昔からのこと。
ことに週刊誌はそうだ。
スキャンダルを報じると、芸能プロは所属する人気タレントの取材を一切拒否してくる。
これが女性誌は困る。
総合出版社が発行する一般誌であっても、同社が発行する他の媒体に対して取材拒否をしてくる。
売上げに直結するため、これが社内で問題になり、
「余計な記事を書くな」
と、身内から批難されたり。
その昔、週刊誌記者だった私はそんな経験を何度かした。
だが、これは芸能界に限らず、そしてメディアに限らず、すべての分野について言えることだろう。
「批判」と「忖度」
「反体制側」と「体制側」
「当事者」と「傍観者」
どの立ち位置に立って処世するか、その選択は永遠についてまわる問題である。
かつて総会屋が華やかしころ、若手として頭角を現した某氏は、私にこう言った。
「まず、噛みつくんですよ。最初はツブしにかかってくるけど、ツブれないとわかると懐柔してくる」
つまり、「体制側」になるために「反体制側」に立つということ。
処世術は、見かけだけで真意はわからないのだ。
私はラクビーのことは不案内だが、
「ボールより前方にいるプレイヤーにパスをしてはいけない」
というルールにいつも感心する。
前に攻めていくために後にパスする。
この「矛盾」に見えるルールが、まさに人生そのものではないか。
このたびのジャニーズ事務所の事件、あるいは政権批判などに際して必ず「忖度」ということが問題にされるが、「忖度」という「後方パス」によって、自己や自社の利益をはかっているのだ。