この正月から、
「よっこいしょ」
という掛け声が無意識に出るようになった。
無意識だから私にはわからない。
愚妻に指摘されて気がついた。
「もう歳なのねぇ」
憎まれ口を叩くので、
「バカ者、乳ガンの妻の介護をしているから心身ともに疲れているんだ」
反論すると、
「どっちが介護しているのよ! 何でもかんでも言いつけて」
強気で言い返す。
これだけのファイトがあればいいだろう。
確かに法務から帰宅しても、私は洗濯をしなくなった。
厭きてきたのだ。
「ちょっと、洗濯はどうしたのよ」
愚妻の非難に対しては、
「おまえが入院すれば、わしはイヤでも洗濯しなければならんのだ。だからいま鋭気を養っておる」
そう言い返して煙にまいている。
それはともかく、気をつけて自分を観察すると、立ち上がるときはもちろん、何か行動に移るとき、
「よっこいしょ」
と声を出している。
こうした掛け声は熟年には大事で、
「これから動かすぞ」
と身体に言い聞かせることで、ギックリ腰などの予防になると、何かで読んだことがある。
無意識に予防を始めたのだろうか。
だが、「よっこいしょ」は前向きな言葉ではない。
何よりカッコが悪い。
それで、この言葉を口にすまいと意識するのだが、意識すればするほど「よっこいしょ」が出てくるのだ。
意識と無意識は表裏一体で、無意識も意識のうちということか。
ならばトコトン「よっこいしょ」でいこう。
居直りは私の得意とするところなのだ。