歳時記

強く生きる

投稿日:

万年筆の修理(ペン先の調整)に行ってきた。
細字用のペン先ということなので、私が望むような極端な太字にはならないと言われたが、可能な限り太くしてもらった。

これで6千円(だったかな)。
支払うとすぐに忘れてしまうのだ。

グラインターを使用して調整の時間は、わずかに数分。
職人技術に、作業時間の長短はない。
こういうのを「技術料」と言うのだろうと感心した次第。

だが、ずっと気になっていた万年筆の調整をしたというのに、ちっとも感激が起こらない。
字を書いてみる気にもならない。
性格的にアマノジャクということもあるのだろうが、結局、「達成」してしまえば、
「ハイ、それまでよ」
ということなのだろう。

すなわち「未完をもって最上とする」ということなのだ。

昨夕は、九十九里・御宿の古民家和食屋『愚為庵』に出かけ、今年の締めくくりの挨拶をしてきたが、熱燗をキュッとやる愚妻に「未完」について話した。

「いいか、すべからく人生は、満たされざるを喜ぶべし」

そう説いたのだが、思ったとおり聞く耳など持つわけもない。

「私はごまかされませんからね」
フンと鼻で冷笑しておいて、
「すみません! 熱燗、もう一本お願いします!」
女将さんにニッコリ笑顔で言う。

強く生きるとは、こういうことを言うのか。
今年もあと10日。
未完がどうとか屁理屈はよして、来年は愚妻を見習って強く生きていくことにしようと、密かに決心したのである。

-歳時記

Copyright© 日日是耕日 , 2024 All Rights Reserved.