コロナのワクチン接種が始まった。
接種の順番として、やたら「高齢者」という言葉が出てくる。
接種に限らず、コロナ関連ニュースは、「高齢者」という言葉がセットで報じられる。
これに愚妻は機嫌が悪い。
「おい、高齢者」
私が呼ぶと、
「あなたも同じでしょ!」
怒るのだ。
だから私はすぐに言い直す。
「すまん、婆さんの言い間違いだった」
機嫌は最悪になる。
過日、ある会議で、
「ニュースで高齢者と言われても、自分のこととは思わないわよね」
と70代の女性が言い、同世代の女性の方々が一様にうなずいていた。
年長者は、年少者に対して年齢ほどの開きを感じないが、年少者はその逆で、かなりの年齢差を意識すると言われる。
世代間のギャップが生じるのは、ここいらにも一因があるのだろう。
高齢者は「老害」とは思っていないのだ。
だから周囲の言葉に耳を傾け、自分の立ち位置を認識しなければならないということだ。
だから私は、
「おい、高齢者」
と、あえて愚妻を呼んでやるのだが、私の気づかいは通じないのである。
稽古がずっと休みなので、たまに近くの公園で棒や釵を振りまわしている。
私が武道具を持って家を出るとき、愚妻が言う。
「ヘンなお爺さんが暴れていると110番されるわよ」」
「バカ者、爺さんではない」
私がムッとして言うと、
「あら、ごめんなさい。高齢者だったわね」
我が家はいま、〝高齢者バトル〟なのだ。