「日帰り温泉」の自粛をいつ解除するか。
愚妻が頭を悩ましている。
「出口戦略」がさかんに論議されているので、感化されたのだろう。
「マスクして入浴したらどうかしら?」
愚かなことを言っている。
パチンコ屋へ行く人間の心理と同じだとたしなめたが、
「風呂とパチンコ店は違うわよ」
と正当化する。
「どこが違う」
「違うじゃないの、見てわからないの」
思慮の浅い強弁をするのだ。
「わかった。送り迎えはわしがしてやるから、来週から行けばよい」
「あなたは?」
「わしは入らん」
「どうしてよ」
「もし感染して隔離されたら、誰にも会えないまま、お骨になってしまう。凡夫のわしは、まだその覚悟ができないのだ。おまえは覚悟ができていて、たいしたものだ」
愚妻は一瞬、「ン?」という顔をしてから、
「行かない」
と言い出した。
「行けよ」
「行かない」
「行けよ」
「うるさいわね、行かないと言ったら行かないの!」
思慮の浅い強弁をするのだ。
自粛は私にとっては楽しみだが、こうまで長きに渡ると、生命力の強い愚妻もさすがにストレスが溜まってきたということか。
うくまガス抜きをしないと、とばっちりを喰うのは私なのだ。