「なんだ、いたのか」
愚妻が日帰り温泉へ出かけないときの、私のイヤ味である。
これに続いて、
「風呂に行かないと病気になるぞ」
と追い打ちをかける。
なぜなら愚妻は、
「私が健康でいられるのは風呂のおかげよ」
と言って、いつも威張っているからだ。
塩サウナで足の裏を揉み、露天でふくらはぎを揉み、たっぷりと汗をかく。
これが健康の秘訣なのだそうだ。
風呂に出かける「言い訳」であろうとも、それで健康が保たれるなら結構なことである。
ひるがって、私の健康法は何かと考えると、これがにわかには思い至らない。
健康にはもちろん関心はあるのだが、これを維持しようとする意欲に乏しいのだ。
努力して健康でいるより、怠けていて病気になるほうがいいと考えてしまう。
仕事をして稼ぐより、寝転がっていて霞を食べるほうがいいと考えてしまう。
要するに、ものぐさなのだ。
私が健康でいられるとしたら、ものぐさのおかげだろうと、自己弁護しつつ思うのである。