歳時記

結石の激痛にのたうつ

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 今朝8時、年配の保護観察対象者と喫茶店で会った。
 保護司は月2回、対象者に面接して生活状況を聞き、相談に乗ったり、助言したりして、それを報告書として提出する。
 自宅に来てもらうのが基本だが、たまには外で会う。
 年配者なので、たまたま寿命の話になり、
「いい人は早く死にますね」
 と、対象者が言った。
 ヒネクレ者の私は、
「言い換えれば、早く死ねばいい人ということになるな」
 と受け取り、帰宅するや、愚妻にそのことを言った。
「いいか、まだ間に合う。いま死ねば、お前さんはいい人だったと言われるぞ」
 愚妻はキッと睨んで、
「私は、いい人と言われなくて結構です!」
 せっかく話してやったのに、「馬に念仏」「愚妻に人生の真理」である。
 救い難い女だと思いつつ、道場の仕事場に行くため、荷物を取りに二階の自室に入ったところで、右脇腹が痛み始める。
(結石だ!)
 いつもは予兆があるのだが、今回はいきなりである。
 私は階下に駆け下り、
「結石だ! 病院に行くぞ、支度しろ!」
 すると愚妻は平然と、
「早く死んだほうがいいとか、朝から人のこと悪く言うからよ」
「議論はあとだ!」
 激痛にのたうち、脇腹を押さえつつ、ヨロヨロとクルマの助手席に乗り込んで愚妻を待つ。
 遅い。
 激痛。
 愚妻が明るい顔で出てくる。
 何と、手にゴミ袋をかかえているではないか。
「いまゴミを出して来るから、ちょっと待ってて」
 ノンキなことを言う。
 私はこのときほど愚妻を呪ったことはない。
 結石が動いたのか、病院で苦しんでいるうちに少し楽になり、何とか耐えられるレベルに納まった。
 鎮痛剤アレルギーなので、10日分の合成麻薬の座薬を処方してもらった。
 帰途のクルマの中で、
「早く死んだほうがいいとか、朝から人のこと悪く言うからよ」
 同じことを繰り返し口にして、愚妻は私を責め続けたのである。

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