「寸鉄人を刺す」
という言葉がある。
「短い刃物で人を刺し殺す」
ということから転じて、
「短く鋭い言葉で、人の急所をつく」
という意味に用いる。
政治家であれ、実業家であれ、ヤクザであれ、ひとかどの人物の言葉は、まさに「寸鉄人を刺す」なのだ。
ある実業家は、
「根っこがなければ、桜は咲かない」
と、私に言った。
花を咲かそうとするなら根をしっかりと張れ、という意味に、そのとき若かった私は解釈したが、この歳になって振り返ると、
「あせるな」
という意味ではなかったかと思うのだ。
多忙なヤクザ親分に、
「忙しくて大変ですね」
と私が言うと、親分はこともなげにこう言って笑った。
「お宅、息をするのに疲れるかい?」
解釈は人それぞれだろう。
含蓄に富んだ言葉だと今も思っている。
いかな「万言」を費やそうとも、「寸鉄」たる言葉にはかなわない。
人間は「言葉の動物」である。
言葉とは、いったい何なのか。
そんなことを、このころ本気になって考えるのだ。
言葉とは何なのか
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