歳時記

腰痛である。

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 合宿が終わった翌日から腰痛で参った。
 ギックリ腰になりそうで、
「痛テテテテ」
 顔をしかめると、
「稽古はほどぼとにしなさいよ」
 愚妻がテレビを見ながら、つまらなさそうに言う。
 癪なので、
「痛テテテテ」
 を連発するが、私の悲痛な訴えは完全無視。
「ちょっと行ってくるわね」
 と言い置いて、連日の日帰り温泉である。
 思うに、合宿では私だけ、稽古らしい稽古はせず、体育館の中をウロウロしていたのが悪かったのかもしれない。
 稽古すれば体重が分散されるが、ウロウロは腰に来るということか。
 私が勤め人であれば、「痛テテテテ」で仕事を休むことができる。
 だが、自由業はそうはいかない。
 休めば仕事は滞るだけで、自分の首を絞めることになる。
 しかも、道場の稽古がある。
 つい、「痛テテテテ」を口走って腰に手を当てると、
「館長は何歳?」
 と、小学校高学年の女子がきく。
「12月で67歳になる」
 と答えると、
「若いんだね」
 と感心している。
「そうか、館長は若く見えるか」
 と喜んだところが、
「ちがう。70歳を過ぎているのかと思ったの」
 腰痛以上に、私の心は「痛テテテテ」になったのだ。

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