歳時記

身近な人

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「身近な人ほど大切にせよ」
 と言う。
 言葉を代えれば「感謝せよ」ということになる。
 空気と同じで、身近であればあるほど、その存在が当たり前になって、感謝の念が希薄になるということだ。
 今朝、風呂に入っていて、ふとそのことが頭をよぎった。
 愚妻は私にとって、二酸化炭素に近くとも、一応、空気的な存在である。
 感謝せねばなるまい。
 そう決心した。
 だが、気持ちは形に現さなければ相手に届きにくい。
 ことに、ものごとをシンプルに考える愚妻はそうだ。
 そこで私は風呂から上がると、合掌をして愚妻に深々と頭を下げ、感謝の念を形に現したところが、
「ちょっと、私はまだ生きているのよ」
 柳眉を逆立てたのである。
 身近な人を大切にするというのは、かくも難しいことであることを思い知らされ、私はまた一段と成長していくのだ。

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