愚妻は早々にスーパー銭湯に出かけた。
クルマで5分ほどの距離だから、気軽に行けるのだろう。
「朝は空いているのよねぇ」
と、ノー天気なことを言っている。
朝から露天風呂に浸かるヒマ人がどこにいる。
これまでであれば、
「行く?」
と私に声をかけていたはずだが、いまはそういうことはない。
「行ってくるわ」
言い置いて、さっさと出かける。
お互い、干渉の度合いが低くなってきている。
ほどよい距離感である。
「君子の交わりは、淡きこと水の如し」
と言うが、夫婦も一定の年齢になれば、「水の如し」がいいということか。
武道の極意は「間合い」にある。
相手と対峙しつつ、近寄ったり離れたり、「虚」をつくったりしながら、勝ちという「実」を得る。
空手を50年やってきて気づいたのは、人間関係を制するのは、武道と同じく「間合い」ということである。
言葉を変えれば、
「虚と実の狭間に勝機あり」
ということになる。
そのうち、愚妻との「間合い」はうんと離れ、最後は「この世と、あの世」になる。
もはや戦いにはならない。
虚も実も不要。
となれば、虚と実を用いて駆け引きする今を、もっと楽しむべきだろう。
今夜は、編集者と打ち合わせ。
テーマは「生き方論」になる。
夫婦の「間合い」
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