歳時記

お婆さんの一言

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 このところ早朝ウォーキングは、一人で出かけている。
 愚妻はサボリである。
「私、パス」
 この一言で終わり。
 不謹慎の極(きわ)みだが、もとより本人にその自覚はない。
「そんなことでどうする!」
 と叱責した手前、私は何が何でもウォーキングを継続せねばならない。
 意地こそ「継続の母」なのだ。
 で、一昨日のウォーキング。
 歩行補助器を両手で押しながら、お婆さんがウォーキングをしていた。
 足が遅いので、このまでは私が追い越すことになる。
 だが、早朝の田舎道。
 背後から急接近して「キャッ!」ということになっては、時節がらヤバイことになる。
 そこで、足音をわざとさせ、
「後ろにいますよ、これから追い越しますよ」
 ということをメッセージしつつ、接近すると、お婆さんが立ち止まって私を振り、
「足が早いですねぇ」
 と感心してくれたので、何となく立ち話になる。
 お婆さんは近くの老人ホームで暮らしているとかで、
「歩けなると大変ですからね。五千歩を目標に毎朝歩いているんです」
 とおっしゃる。
 私が時間帯をズラしたので、これまでお会いすることがなかったのだろう。
 私は酔狂でウォーキングしているが、元気でいるために必死でそうしている人もいる。
「無理をせず、気をつけてくださいね」
 と告げて私は先を行ったが、もし私が長く生きたなら、きっとこのときの会話を思い出すことだろう。

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