歳時記

「おもてなし」は大嫌いだ

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 温泉施設の多くは、
「刺青、タトゥーのある人の入浴はお断り」
 となっている。
 当然だろう。
 刺青は反社会的とされる人たちの象徴であるからだ。
 当のヤクザ諸氏も、私の知る限り、それに対して特段の反論はしない。
 なぜなら、刺青を背負うということは、カタギでなくなるという宣言であり、この時点で、
「カタギと同じ社会生活は送らない、送れない」
 とハラをくくり、このハラのくくりにヒロイズムがある。
 だから、いっぱしの兄ィは、
「刺青を入浴させないのは差別だ」
 といった小賢しいことは言わない。
「自分たちはカタギとは違う」
 という矜持があれば、
「カタギと同じ扱いをしろ」
 というのは、矛盾ということになる。
 なぜ、こんなことを書くかと言えば、外国人観光客に人気の温泉地が、「刺青・タトゥー」問題に頭を悩ませているというニュースを読んだからだ。
 タトゥーのある外国人観光客に対して、入浴を認めるかどうか。
 これを認めれば、日本人で刺青をしている面々もなし崩し的に認めざるを得なくなってしまう。
 だから、「異文化と風紀維持とのはざまで〝おもてなし〟を模索する取り組みが続いている」とニュースは報じる。
 バカな論議だ。
「郷に入れば郷に従え」
 というがごとく、温泉施設で「刺青・タトゥーお断り」であれば、観光客がそれに合わせるのだ。
 タトゥーがあれば、温泉はあきらめる。
 気の毒ではあるが、それが「異文化」を認め合うということである。
 東京オリンピック誘致のプレゼン以後、
「お・も・て・な・し」
 という言葉がはやっているが、「もてなす」とは、
「心をこめて客の世話をする」
 という意味であって、何でもかんでも客に迎合するという意味ではない。
 私の〝ひねくれ根性〟から見れば、「おもてなし」という言葉の背後に、
「商魂」
 というものを感じる。
「外国人観光客に来て欲しい、でもタトゥーは困る」
 という悩みの根底にあるのは「商魂」であろう。
 心から〝おもてなし〟をしたいのであれば、温泉施設が金を出し合い、外国人観光客専用の共同浴場をつくり、無料で開放すればいいのだ。
 たまたま温泉施設をニュースで読んだので俎上にあげたが、みな似たり寄ったり。
 中国人観光客の〝爆買い〟を嘲笑しつつ、モミ手して商売にしているのは誰だ。
 東京五輪が決まって以後、「観光立国」に拍車がかかっている。
 外国から来ていただくのは、もちろん結構なことだ。
 だが、モミ手しながら、
「ネコも杓子もいらっしゃい!」
 ということでいいのか。
 私は「お・も・て・な・し」という流行語が大嫌いである。

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