歳時記

打率勝負

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 カレンダーに目をやって、今年が平成25年であることにいまさらながら驚いた。
「平成」の時代になって、いつのまにか25年も経っているではないか。
 この調子だと、残りの人生はいくらもない。
「少年老いやすく、学成り難し」
 という言葉が脳裏をよぎる。
 さしたる志があるわけではないが、「残り時間」ということをしっかり肝に銘じ生きていかねばなるまい。
 愚妻に決意を告げると、
「そうね。遊んでばかりいないで、頑張って仕事してちょうだい」
 ドラ焼きを頬張りながら言う。
 愚妻は、どこまでもリアリストなのだ。
 出版界は依然として不況である。
「活字離れ」と言われて久しいが、携帯電話やゲームに小遣いを費やせば、本にまで手が回らないのは当然だろう。
 本が売れないとなれば、出版社は冒険をしなくなる。
「ホームランか三振」
 といった企画は通らない。
「シングルヒットは確実、うまく行けば2塁打か3塁打」
 といった企画ばかり狙う。
 打率勝負なのだ。
 私は読者諸兄のお陰で何とか打率を保っているが、これは努力の結果なのだ。
「わかるか。俺は遊んでいるように見えるかもしれんが、必死でヒットを狙っておるのだぞ」
 愚妻に念を押すと、
「デットボールって言うの? あれも一塁に行けるんでしょ?」
 野球オンチはノー天気なことを言うのだ。

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